(2022年7月9日投稿)
規矩士は室内楽の演奏にも意欲があったようである。ヴァイオリンは高階哲應、チェロは伊達三郎。「ベートーヴェントリオ」としてユニットを組んで、演奏活動をした。
高階哲應(哲夫とも)
伊達三郎氏は関西で活躍。ピアニスト、東京藝術大学教授伊達純氏の叔父のようである。伊達純氏は規矩士と同じクロイツァー門下とのことである。
http://senriyama-kai.la.coocan.jp/kaishi/10k/senriyama-kaishi(10)7-25.pdf
ベートーヴェントリオ
このベートーヴェントリオの活動のことは、現在写真と、東京芸術大学百年史演奏編に記録が残るのみなので全容は把握しきれていない。しかし読売新聞アーカイブに記録があることがわかったので、紹介をする。
元々このユニットは、大正12年12月23日に東京音楽学校奏楽堂で行われた演奏会で旗揚げしたかもしれない。いや、旗上げというより「演奏会があるので『室内楽』をやってみよう」ということで、ひょっとしたら1回限りのものだったかもしれない。現在(2022年6月)わかっている限りにおいて、この演奏会が最初であるようだ。
『東京芸術大学百年史演奏編』に残る大正12年12月23日の記事
曲目
ベートーヴェン:トリオ第4番(作品番号が書いていないが、おそらく作品11のものだと推測する)
そして同じ『東京芸術大学百年史演奏編』にもう一つ記録が残る。
大正14年6月27日・28日
曲目
ベートーヴェン:遺稿三重奏
筆者はあまり室内楽が詳しくないので、何の曲なのかがこれだけではわからない。(すみません)
そしてこの後は読売新聞アーカイブに残るものである。
1925年(大正14)年9月27日号。
「第一声を挙げる ベトーベントリオ団
東京音楽学校のピアノ講師田中規矩士氏を中心にバイオリンの高階哲夫氏、セロの伊達三郎氏によって組織せられたるベトーベントリオ団は、今春来もっぱら練習と研究を続けていたが、10月4日午後7時丸の内報知講堂において第一声を挙げ、一般ファンの期待していたベトーベンの遺作三重奏曲を始め、シューベルトの作品100番、キイチネル作品97の1、2、メンデルスゾーンの作品66などのトリオ曲を演奏することになった。会費(?活字がつぶれていてわからないけどチケット代のことだと思います)1円、2円」
6月に東京音楽学校で演奏会をして、同じ年の10月に開催される演奏会の記事なので、満を持して、一般の公開演奏会に臨んだと推測する。「一般ファンの期待していたベトーベンの遺作三重奏曲」とあるので、6月の演奏会でベートーヴェンの「遺稿三重奏」は、評判が良かったようである。
もう一つ。1927(昭和2)年10月5日付け
「田中規矩士高階哲夫伊達三郎氏のベートーヴェントリオは8日午後7時半から報知講堂で開催。
曲目はハイドンの作品6の(活字潰れ)、モーツァルトの作品15‐1、ベートーヴェン作品70-2、メンデルスゾーン作品66」
二つの演奏会の会場となった「報知講堂」とはこのような会場であったと思われる。
このベートーヴェントリオは、高階氏の自宅(多分)を連絡先としていたようである。音楽年鑑 : 楽壇名士録. 昭和4年版に記載がある(44コマ64ページ)。
同書に1928年(昭和4年)10月8日の演奏会のことも記載がある。(14コマ5ページ)
この資料はインターネット公開されている。
(演奏会の記録の方も訂正しておきます)