田中規矩士・たなかすみこ夫妻の記憶 β版

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34.田中規矩士ものがたり2-6「嗚呼憧れの欧羅巴。規矩士伯林に行く」6ベルリンの思い出の記4

7枚目。

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御用聞きの小僧たちに至るまでなかなかハイカラなものを歌っています。お話はベルリンに戻りますが、ベルリンには音楽会が普通使用されるものに六ヶ所あります。フィルハーモニーベートーヴェンザール、ジングアカデミー、バッハザール、マイスターザール、ベヒシュタイン等がそれですが、その他にも猶2、3方でもありません。いずれもそれらでは、有名な方がやられますが、殊にフィルハーモニーは千人以上も収容の出来る大ホールとしてベルリンでは有名になっています。

 

フィルハーモニー、ジングアカデミー、バッハザール等には相当のパイプオルガンが備えられて、そこでは時折、演奏を聞きますが、素晴らしいので、いつも感心させられます。これは又、どこの教会でも丁度普通のリードオルガンのように使用されています。開演は大抵毎夜7時半、または8時ですが、8時からが普通になっています。料金は大体1円から3円くらいですが、著名の人の演奏には、2円から8円位まで取られます。切符は前売りを利用すれば二週間前に求められるものの、それもうかうかとしていると、直ぐになくなってしまいます。こんな具合ですこし商売っ気のある奴は金峰の買い求めをやって閉口させられます。安い切符をみすみす高く買わねばならぬ事も無きにしも非ずでした。座席は大抵一定していますが、フィルハーモニーのような広いところになると下等席は早いもの勝ちですから、そんな場合は一寸前あたりも早くから外で待っている必要があります。いざ扉が開かれると潮の流れるように我勝ちになだれ込みますが、これは一寸帝劇等の天国席によく似ています。(7枚目終わり)

 

8枚目。

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フィルハーモニーで演奏される特別著名の人々の時は、さしもの広い会場も満員の盛況です。このような催しが種々のザール(ホール)で同時に開かれる場合が少なからずあります。

こんな場合にはその選択にまた少なからず頭を使わされます。一晩に二カ所走ったこともありました。いわゆる世界的名家の演奏は、ベルリンといえどもそうは(?)には聴けません。(なかなか聴くことが出来ないと言っているのでしょう)ベルリン滞在中わずかに数える程だけだったのは誠に残念でした。

普通音楽会ではブリュートナー、ベヒシュタイン、スタインウェイピアノが使用されますが、稀にはイバッハ、スタインウェヒ等も使われます。日本では相当騒がれた世界的大家と言われた人が、ベルリンでは案外不評判い終わった人もありました。遠日の音楽会では、どのような人がどんなか記憶に苦しみます。その人々の名前だけでもちょっと大変ですが、音楽会だけは何がさておいても聴くように努めました。ベルリンには音楽新聞の記事(?)が出来ておりまして、種々の催しが予告されます。そしていよいよ(?)シーズンになりますと前にも申した通り、いろいろのビラが貼りだされます。そして気に入ったプログラムがある場合には、すぐに前売り券売り場に飛んでゆきます。もっとも当日会場で買えないことはないのですが、これは売り切れの場合もありますので、多少心配があります。それゆえ、一割以上の割り増しを取られるのは解りきっても便宜と安心から前売り券を買う理です。日本の如く会場で切符を買えるつもりで行くととんだ失敗をすることがあります。(切符はいつも下等席であることを申し添えます)(8枚目終わり)