田中規矩士・たなかすみこ夫妻の記憶 β版

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33.田中規矩士ものがたり2-5「嗚呼憧れの欧羅巴。規矩士伯林に行く」5ベルリンの思い出の記3

5枚目。

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コーラスで思い出しましたが、よく青年団の一隊が四列の隊形で市中を行進するのに出会いますが、その時には大抵国歌のようなものを三部位で声高らかに勢いよく歌って練り歩きます。よく足で拍子をとりながら秩序整然と行進しているのは、はたから見ていて感じの良いものです。殊に国歌は市中によく響き渡るので、ぞくぞくさせられます。調子の悪いといった連中は一人もありません。実に何とも(?)よい気持ちにさせられてしまいます。

 

2m(2kmかもしれない)行列の後にくっついて歩きました。のちに(読み下せない?)スカラ座の演奏広告の時でしたが、シルクハットに燕尾服の正装音楽隊の一隊30名の市内演奏行進に出会ったことがあります。ついうかうかと後にくっついて2,3町歩きました。今から考えると滑稽なようですが、その時はこれでも小僧連中の中に加わって、一生懸命に歩いたものです。ちょっとした広告にさえ、立派な楽隊を(?)出すのを比べて考えていかに鷹揚な(?)楽隊に満足する我が国の幼いことでしょうか。つくづくと哀れに感ぜしめられます。日本も近来音楽行進をやり始めているようですが、楽器を使用するのみならず、コーラスをも入れたらばさぞ行進が面白くなることと思います。

 

日曜日毎に楽隊入りの救世軍市内説教行進がありますが、素人とはいえなかなか巧みなもので、私等も(?)に拝聴しました。すべてあらゆる音楽団隊はなかなかすばらしい活動を続けています。音楽団隊には電車従業員、工場職工たちといった変わったものもあります。(5枚目終わり)

 

6枚目。

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野外演奏ほど民衆に強い音楽趣味を鼓吹するものがありません。ベルリンに限らず欧米諸国では盛んに行われますが、日本でもこのようなものをどしどし沢山にやったらば、どれ程か音楽に利する所があるでしょう。丁度私がイタリアに旅行中のことでした。ナポリの停車場で下車した時、丁度プラットフォームに約50名位のバンドが並んでおりました。一寸した人を歓迎する意味で整列していたのですが、やがてその人が下車すると彼等はとても猛烈に演奏をはじめました。幸い自分も同じ列車でしたので、意気揚々とその人についていきましたが、何だか自分を歓迎してくれているようで、甚だ嬉しうございました。諸外国の戸外演奏は所を嫌わずこのように実に盛んです。

万歳の代わりにすぐ楽隊を持ち出してきます。停車場で時ならぬ楽隊が聞けるとは、ちょっと想像がつきません。ローマでは公園で軍楽隊の演奏を聴きました。ご存知の如く(だと思う)イタリアという国は懐中物を紛失し易い所なので、これには少なからず心配しました。聴衆の中に混じって聞くのも相当警戒をする必要があります。とうとう財布の口を押えながら立ち聞き(?)しました。別に間違いはありませんでしたが、とにかく周囲を警戒しながら音楽を聞くなんてことは、ちょっと珍しい事です。歌の国といえばまずイタリアでしょうか。(6枚目終わり)