田中規矩士・たなかすみこ夫妻の記憶 β版

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32.田中規矩士ものがたり2-4「嗚呼憧れの欧羅巴。規矩士伯林に行く」4 ベルリンの思い出の記2

(3枚目)

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理解という点では、全くうらやましくなります。日本にも早くそのような時期の来ることを祈ってやみません。とにかく彼等は音楽に恵まれていることは事実で、一日中良い音を耳にしないことはないでしょう。朝早くからラジオではよい音楽を放送します。往来を歩いてもちょっとしたカフェーの窓から、オーケストラが聴こえてきます。どんな地以来カフェ―でもグランドピアノの一台位は置いてあります。

 

こんなところでも相当な曲目を演奏するのですから、全く驚かざるおえません。

日曜日には方々の教会のベルが鳴り響きます。はじめは馬鹿にやかましく感じますが、慣れると本当によくなります。やがて教会からパイプオルガンやコーラスが(?。聞こえてくるといいたいのかな?)何となく荘厳、敬虔の思いにわが心を奪われてしまいます。

話はちょっと戻りますが、市中の公園では新緑の頃、軍楽隊の勇壮な演奏が日曜日毎に聞かれます。これがまた聴衆で時々ならぬ誰泉を呈します(よくわからない。要するに聴衆が楽しんでいると言いたいのだと思います)

我が国でもこんな風に音楽が通俗化したらどんなにか人の心を音楽的に導くことが出来るでしょうか。真に残念な次第であります。前に乞食音楽者についてちょっと申しましたが、実際彼等の中にはなかなか上手な者がいて、聴く者をほろりとさせます。そんな時は思わず少しやりたくなります。横浜の通りで一銭か二銭の料金でクライスラーとかサラサーテとかを聴くとか、あるいは公園の芝生の上に腰をおろしてそれら(3枚目終わり)

(4枚目)

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を無料で聴く等はとても経済的な音楽の聴き方だと思いました。

安いといってもこんな安い料金はないでしょう。気候の良い頃には乞食音楽者、よく言えば音楽家が毎日のように妙技を振るまいながら、市内を練り歩きます。彼等はこれで充分生活を続けて行くことが出来るとは、さすが音楽の都だと思いました。

次に面白い事は居酒屋の音楽ですが、ご参考までに少しばかり申し上げましょう。大体居酒屋には中流以下の連中が集まってきますが、四、五名くらいより集まると直ちにコーラスを始め、そして踊り出します。ダンスの中にはあまり上等でないものもありますが、踊りそのものはなかなか自然的で、優美なものです。十人から二十人位集まって、面白く合唱している下層民をよく見受けました。酒を飲んでも決して喧嘩をしないのが、むしろ不思議な位です。酔えば歌い、歌えば踊るといった調子ですから、そこには少しもいやみがありません。つまり歌えば必ず足が自然と動き出し、いつの間にかダンスを始めるといった具合です。誠にわざとらしくないのが感心させられるところでしょう。日本ではややともすれば酒場で怒鳴り散らすのが普通であるのに比べて、何と面白い変わった世界ではありませんか。この連中のコーラスとて決してユニゾンではなく、必ず三部とか四部とかでやりますから、全く驚かされます。何度も立ち聞きをさせられた程に彼等にとっては(読み下せない。良かったと言っているのだと思います)夏の夜の郊外でよくこの種のものを聴きましたが、それらは相当に強い印象の一つになっています。(4枚目終わり)

 

(乞食音楽者だの、下層民だの出てきますが、原典を大事にしてそのままの掲載としました。差別を助長するものではありません。)